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◯GROUPERが昨年に続きメイン・アクトとしてのジャパン・ツアーを4月に行ったが、個人的にずっと楽しみにしていたのは、そのツアーに帯同するENの日本での初ライヴだった。実験的な作品を数多くリリースするRoot Strataの共同運営者でもあるマックスウェル・オーガスト・クロイとジェイムス・デバネーによるサンフランシスコ出身のデュオENは、ギターや琴、ローズなどを用いたマルチ・インストゥルメンタル奏者でありながら、それらを独自の電子サウンドと融合させ、繊細で美しいドローン/アンビエント・サウンドを創り出すユニットである。この春には2ndアルバム『ALREADY GONE』をリリースしており、絶好のタイミングでの来日となった。お寺、畳の上、昼下がりというシチュエーションで行われた養源寺でのライヴでは、楽器で生み出した音にカセット・レコーダー、エフェクター、ミキサーを使い彼らなりの音響の広がりを演出。また、最終日のVACANTではスーパー8mmフィルムの映像も交え、前回とはまた一味違った美学をみせてくれた。STARS OF THE LIDやティム・ヘッカーといった大物アンビエント系アーティストと比較される存在でありながら、そのパーソナリティはあまり伝わっていない2人。実は日本在住経験もあり日本語ペラペラのマックスウェルと、パートナーのジェイムスに、VACANTでのライヴ直前に話を聞いてみた。
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“1stアルバムの『THE ABSENT COAST』はコラージュの要素が強くて、実験的な観点から様々な音を繋ぎ合わせていったんだけど、『ALREADY GONE』では琴やベース、ギター、ローズといった楽器の音を、ライヴでのパフォーマンスも意識しつつ前面に押し出してみたんだ”
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―― 今回ENのツアーとしての来日は初めてですよね? マックスウェルは昔日本に住んでいたと聞きましたが、それはどういう経緯だったんですか?
マックスウェル:うん、兵庫県の丹波篠山に住んでた。JETプログラムで来て公立中学校で2年ちょっとくらい英語を教えてたね。もう帰国して4年ぐらい経つんだけど、それでも毎年日本には友達に会いにきたり、Root Strataのビジネスのためにきたりしてるよ。
―― そうだったんですね。来日中はTwitterも関西弁だったから(笑)。
マックスウェル:関西は俺の心の故郷っぽい感じかな? みんな明るいし(笑)。
―― ジェイムスは日本初めて?
ジェイムス:うん
―― どうですか、日本の印象は? イメージ通りでしたか?
ジェイムス:うん、楽しいよ。ホントに綺麗な国だし、素晴らしい山並みがあったり、街には楽しいことが一杯だしね(笑) 。期待してたのとはちょっと違うけど、でもサプライズ的なこともたくさんあったから、
逆にそれはイメージ通りかな?
―― 今回、日本のいろんな地方都市を回ったり、変わった場所でもパフォーマンスをしていますよね。
東京の初日はお寺のライヴだったりしましたが。
マックスウェル:そう、お寺のライヴは素晴らしかった。スペースの雰囲気もよかったし、みんなも静かだったよね。それでもなんとなく良い雰囲気っていうのかな? それってアメリカのライヴと全然違うから。
ジェイムス:あそこでのライヴは本当に素晴らしかったね。初めてのことだったし、良い経験になったよ。あの瞑想的なフィーリングや古い木の音の響きとか。とにかく今回のツアーはいろんなバリエーションがあって、お寺以外にも教会とか高い丘の上とか・・・
マックスウェル:あと、小さいカフェも。
ジェイムス:うん、そういったいろんな音の環境や人々の前でのライヴがあってすごく印象的なツアーになったね。
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―― そうなんですね。もともと2人はどういう音楽に影響を受けてきて、音楽をやるようになったんですか?
ジェイムス:えーっと、最初は近所の人がギターを持ってて・・・そこからいろんな音楽を聴くようになってどんどん発展していった感じかな? まぁ父親からもずっとクラシックを聴かされてたし、それで段々音楽を認識していったていうのもあるね。
マックスウェル:ぼくは子供の頃から、ディペッシュ・モードとかイレイジャーとかが好きだったな。プレイする方は高校生の時、ギターを始めてエモ・バンドに入った(笑) 。でも大学の時きっぱりと1回音楽を止めたんだ。自分で「自分のやってることは好きじゃない」って感じてね。そこから大学卒業して、日本に移ってきてから、改めて音楽をやりたいと思って、ピアノや琴を習い始めたんだ。そしてまたアメリカに戻った時にバンドを始めたって感じかな? 特にバンドをやろうとかそういう予定はなかったんだけどね。
―― マックスウェルは、そのアメリカに戻った時には今のENのような音楽のイメージは持っていたんですか?
マックスウェル:そうだね。当時からスティーヴ・ライヒとかそういったミュージシャンを聴いていて、素晴らしいと感じていたから、ぼくにもできないかなと思ってて・・・実は、ジェイムスはRoot Strataにデモテープを送ってきてくれていて、それも素晴らしいと感じてたんだよね。それがずっと頭の中にあって、誰かのライヴで初めて会った時にそのまま意気投合して、音のやり取りからENの音楽がスタートしたって感じ。だから、なんとなくENのサウンドっていうイメージもできていったね。最初からぼくがピアノの録音とか送ってて、彼がエフェクトをかけたりするっていうやりとりをしてたし。ぼくは相変わらず琴もプレイしてたけど、でも雅楽とかあぁいったのはやりたくなかったから、何か新しいことを始めたかったし、それで琴を棒で演奏したりして・・・だから今のプレイ・スタイルもある程度は想定してたかな?
―― じゃあ逆に、エレクトロニックな要素はジェイムスが持ち込んだのかな?
マックスウェル:うん、彼の最初のソロ作品にそういった部分があったね。
―― それでは、マックスウェルは今でも楽器とかオーガニックな要素を担当している感じ?
マックスウェル:うーん、でもそうってわけでもないかな? 2人ともオーガニックなサウンドが好きだし、それがこのバンドのベースにはなってるよ。エレクトロニックな部分は、ぼくらの音楽を作るために、そのベースの要素に肉付けしていくような感じ。特に、ジェイムスは大学でジャズ・ギターを勉強してたから、素晴らしい演奏家でもあるしね。
―― そうなんですね。では、ジェイムスは逆になぜそこからエレクトロニックなサウンドにも興味を持つようになったのかな?
ジェイムス:えーっと、まず第一にそのミュージック・カレッジ時代はぼくにとってすごい良い経験だったんだよね。だっていろんな種類の音楽コミュニティを体験することができたし。そこでいろんな人や音楽に出会って、世界が広がったていうのが大きかったかもね。
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―― なるほど。ここから少し新しいアルバム『ALREADY GONE』について教えてほしいんですけど、前作『THE ABSENT COAST』はマックスウェルのレーベルRoot Strataからのリリースでしたよね。今回は、Students of Decayからのリリースになっていますが、まずこのような選択になったのはなぜなのでしょうか?
マックスウェル:そうだね、Root Strataの頃からStudents of Decayのアレックスとなかよかったから、互いに姉妹レーベルっぽい感じにはなってたんだよね。それでアレックスが『THE ABSENT COAST』のファンだったし、次の作品が出来たらStudents of Decayから出そうって誘われてて、それで自然にね。ぼくも彼のキューレーターとしての能力や音楽を聴く力をすごく尊敬してたからね。
―― 肝心のサウンドについてなんですが、前作と比べて楽器の音が特にフィーチャーされている印象を受けました。なぜこういうスタイルになったのですか?
マックスウェル:うーん・・・自分の今までやってきた音楽スタイルの積み重ねとして、自然にそうなったて感じかな?
ジェイムス:前のアルバムはコラージュの要素があって、実験的な観点からいろんな音楽を繋ぎ合わせるという意図があったけど、今回は自然といいながらも少し意図的に、ライヴ・パフォーマンスも意識して楽器の音を前面に押し出したところもあるかもね。
マックスウェル:まぁ『ALREADY GONE』の曲も作ったのは大体1年前ぐらいだから、ちょっと自分達のキャリアの中では古くなっているような気もするけど。と言うのも、ぼくとジェイムスはいっしょに働いてるから、普段からミキシングとかレコーディングのことについて毎日話しているからね。
―― では一方で、今作のエレクトロニックなサウンドの部分は、どのようにソースが決まって組み上げられていったんですか?
ジェイムス:そうだな、様々なアイディアを試して、様々なバージョンを作っていくうちに、たくさんの音が出来ていってそれをまとめていったよ。どれが1番いいのかなって感じで。だから、もっとノイジーな音楽もずっと作っていたんだよ(笑)。
マックスウェル:そう、実はいろんなサウンドが毎日できてくるんだよ。でも毎日CD出したらつまらないでしょ(笑) 。ホントに毎日、家とかいろんなスペースで音楽を形にして、互いにやりとりしてるから。
―― じゃあ今回のアルバムの中で気に入ってるサウンドや楽器とかってありますか?
マックスウェル:今回は琴の演奏が前よりうまくなったから、新しいやり方で表現できるようになったところが気に入ってるかな? 後はジェイムスが今回ベースを使うっていうアイデアを出しくれたから、それが今回のアルバムでもハイライトにもなってるな。
―― ENの楽曲の組み上がりとしては、ドローンとか実験的な部分もあるけど抒情的な要素もありますよね。こういうセンスは自然とそうなるのですか? それとも意識的にやっていることなのですか?
ジェイムス:そうだな、ぼくはジャズのバックグラウンドがある分、ハーモニックな構成を好む所があって、それが自然と影響を与えているのかもね。
マックスウェル:ぼくはいつも美しいものを作りたいっていうのがあって、ただ単にフィーリングとしてサウンドがその考えに相応しいかどうかを考えているだけなんだけど・・・2人のことに関して言えば、ぼくらの音に対するアプローチは全然違うんだけど、最終的な結論に対しては意見が完全に合うんだよね(笑)。
ジェイムス:自分達の音楽って、作ってる時よりも作ってしばらく経ってからの方が、自分達の音楽に対して確信が持てるよね。と言うのも、作っている最中は、同じものを何度も何度も聴いているから(笑)。
マックスウェル:そう、時間が経って改めて聴くと、多少うんざりしてた音も「あ、良いじゃん」って新鮮な驚きがあったりするよね。
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―― 先ほど、マックスウェルが美しいものを感覚的に作り上げているという話があったけど、ENとしてはその美しいという感覚について、何らかしらのコンセンサスはあるんですか?
マックスウェル:ぼくらはなんとなく同じような感覚があると思うな。
ジェイムス:お互い個々の意見は尊重し合っているし、どちらかがサウンドを持ってきたらそれにリアクションを返してるし、そんな2人の音を介したコミュニーケーションの中で、個々の意見のバランスを取りながら、ハイライトになる最良の組み合わせを探っているよ。
マックスウェル:それで2人とも音について、それが本当に相応しいかどうか常に話し合ってるしね。
―― そうなんですね。『ALREADY GONE』のサウンドは『THE ABSENT COAST』より作品の印象としてポジティヴになったような気もしますが、こういった指摘に関してはどう思いますか?
マックスウェル:うん、そうだね。それも自分達で今回意図したことの1つだよ。
ジェイムス:そう、最初のアルバムを出した後にポジティヴな感覚が生まれてきて、そういうのも自分達のサウンドだなって気付いたから、それを意図的に広げていったよ。
―― 少し音楽の話から離れますけど、今後の活動として音楽以外になにかやってみたいこととかありますか? マックスウェルはRoot Strataの活動もあるけど。
マックスウェル:Root Strataに関していえば、プランなんかは(共同オーナーの)ジェフが決めてるんだ。ぼくは2000年に日本から帰国して初めて会って、なかよくなってから入ったっていうのもあって、途中参加だからね。その中で今はデザインとかビジネスっぽいことを担当してるけど、オンライン・フェスとかイベント関係も最近やってるね。でも主導権はいつもジェフだよ、学校の校長先生みたいに(笑)。ジェフがぼくに話さないで何かを決めるってことはないんだけどね。
ジェイムス:ぼくはEN以外で何か特別な活動は今のところ考えてないけど、普段からいろんなことを試してみたい気持ちはあるよ。でも結局いつもマックスウェルに話してしまうから、最終的にはENのものになっちゃうよね(笑)。
マックスウェル:それはぼくもさ(笑)。
―― ちなみに今までのENのジャケットとかは誰がデザインしたんですか?
マックスウェル:ぼくだよ! イメージを決めて、デザインとかレイアウトをやったんだけど、作ったものはジェイムスと相談して、彼がOKを出してからENのものになるな。
―― 例えば、カセットテープの作品を作ろうとか思うことはないですか?
マックスウェル:いや、ずっと出したいと思ってて、ぼくらは何度もカセットのための音楽も作ったぐらいだからね。多分もうすぐカルフォル二アでカセットのリリースがあると思うよ。まだ完全には決まってないけど。
ジェイムス:カセットを作るのは本当に時間がかかるし、大変だから。
マックスウェル:それにぼくらは2人とものんびりしてるし(笑)。
―― 最後にENの活動としてのゴールや目標みたいなものはありますか?
ジェイムス:うーん、あんまり考えたことないけど、いつも初心に戻って、自分達を驚かせるってコンセプトを忘れずにいろんなことに挑戦し続けたいな。明確な方向性を予め決めたりせずにね。
マックスウェル:そしてまたいつかヨーロッパ・ツアーをやりたいな。もちろん日本にも戻ってきたいよ。
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